防府音楽祭ともうひとつの組曲佐波川

   東  佳 範
 
年の暮れも近づき新年早々に第6回防府音楽祭
が開催される。防府音楽祭には関係者しか知ら
ない秘話がある。
 平成8年当時、私は防府文化交流会を主宰して
いた。これはあるピアニストのコンサートを主
催するためであって、近藤さんが私を推薦して
下さったと聞いている。以来いろいろなジャン
ルのコンサートを開催してきた。
 アスピラートの事務局から防府出身の音楽家
室内楽のコンサートを主催してほしいという
依頼であった。それはヴァイオリン奏者の素村
裕子さんがアスピラートでコンサートを開催し
たい希望があり、それをアスピラートが応えた
ということであったが、諸般の事情で主催でき
ないので我々で開催することとなった。
 メンバーとしてチェロは東京都交響楽団の首
席の田中雅弘さんと地元のピアニストだった。
本当は原田英代さんを起用したかったのだが調
整がつかなかったらしい。そこで私は富海出身
でスイス在住の尾中純一さんを招聘してコンサ
ートを企画した。曲目はメンデルスゾーンのピ
アノ三重奏と小品であった。
 当時私の長男は上右田の保育園に通っていた。
土曜日は私が送り迎えを行ったこともある。佐
波川の土手を走る時は組曲佐波川の一節を口ず
さむことがあった。ふとこの組曲をピアノ三重
奏に編曲して、素村さんのコンサートにかけた
らと思い、佐波川を歌う会の会長である松下文
二さんと、作曲家の高橋正剛先生に了解を頂いた。
この曲は高橋先生が編曲され「佐波川の主題に
よるピアノトリオのためのコンポジション」と
いう室内楽となり当日のコンサートで初演された。
大きな声で言えないが「東プロデュースの佐波川
の誕生であった。この曲は東京でも演奏されラ
イブCD化されている。その後、第2回の防府
楽祭で原田英代、田中雅弘、吉田篤各氏にて再
演された。
 またこの佐波川の陰に面白い話が隠されている。
初演の夜、出演者とメンバーで打上げをしたの
であるが、その席上田中さんが「防府音楽祭を
起こしたい」と言われたのである。
 田中さんは霧島音楽祭の主要メンバーであり、
音楽祭のノウハウは持っておられた。この話が
きっかけとなり、アスピラートの吉田房枝さん
の尽力で防府音楽祭が生まれたのである。私は
防府音楽祭設立にかかわり誇りに思っている。
 来年も1月11日から14日のスケジュールで開催
される。皆で地元の音楽祭に参加し、支援した
いと思う。