昭和の町(豊後高田市)を訪ねて

              山根耕太郎
 
 北九州市から南へ国道10号線を大分方面に下
る途中、宇佐市から国東半島に少し入ると豊後高
田市がある。3年前にある研修旅行で立ち寄り興
味をひかれ、またゆっくりと立ち寄って見たいと
思い、春の陽気にも誘われてドライブがてら足を
運んでみた。
 人口は防府市の半分にも満たないひなびた町で
あるが、そのまちの商店街はレトロな昭和の匂い
を残し、我々昭和30年代生まれの生粋の昭和っ
子にはとても懐かしく感じる。
 防府の町の商店街にも古い門前町の町並みを残
した何か懐かしい部分はあるもののどこかが違う
と感じる。
 昭和の町の良さは、古さを誇りに思いそこに住
む商店主、地域の人々が徹底して昭和の古きよき
時代の商品を集めているだけでなく、自分たちの
町を愛していることが伝わってくる。
 大分県は「一村一品運動」を始めた県ではある
がこの町は「一店一品運動」をモットーに町おこ
しに取り組んだとのことである。
 自分の店にある他の店に負けない商品、サービ
ス、家宝、なんでもいいけれど目玉商品にしてパ
ンフレットに載せる。たとえば昼食に入った串揚
げの店には壁の棚にぐるりと招き猫が置いてあり、
仮面ライダーのフィギアがガラスケースのショー
ケースに入れて展示してあった。商店街を案内し
てくれる観光ボランティアの説明もわかりやすく、
親しみが持てた。
 また商工会議所の裏手にある昭和館には昭和の
おもちゃ、絵本などが展示された教室、町並みな
どが造ってある。入り口では紙芝居が上演されて
おり水あめをなめながら子供も大人も見物してい
る。
 絵本が展示してある教室では、これもボランテ
ィアの年配の女性がオルガンの演奏に合わせて、
「ふるさと」、「赤とんぼ」などの文部省唱歌を披
露してくれ心温まる思いがした。
 各地で町おこし、村おこしが叫ばれ、商店街の
活性化や街づくりに取り組んでいる。しかし建物
や資料館等のハード面の整備だけはうまく行った
ように見えても長続きはしない。「街づくりは人
づくり」とよく言われるが、防府の街の活性化の
ヒントになればという思いを胸にこの昭和の街を
後にした。