第二の人生に思うこと

           浴 永 直 孝

 もうすぐ63才になる私は、長年勤めてきた会
社を離れ、第二の人生に入ろうとしております。
その第二の人生で、自由な時間を豊富に持てるは
ずであろう私は、まだ身体が動く70歳位までに
何をして行くのでしょうか? 情けないことに、
まだ決まりません。
 高校・大学時代は、卓球に明け暮れました。自
分に才能が無いことにうすうすは気付いておりな
がら、「自分は強くなれない」ことを本当に自覚
したのは、二十歳でした。それからは、酒に依存
する生活になってしまい、いまだに続いておりま
す。
 会社(素材メーカー)に入ってからは、天邪鬼
な私は、会社が望む現業を支える技術者を嫌い、
当時当社では沈滞している直に金にならない新製
品開発に固執して、外の世界に顔を出し、数多く
の優秀な開発者・研究者の方々と知り合いました。
優秀な方々との仕事は、充実感がありました。
 一方、上司の眼を気にせずに休暇即ち遊びには
かなり力が入りました。北方が主体ですが、
4,160mのスイス・ブライトホルンを登り、同じ
モンゴリアンであるグリーンランドとアラスカ・
バローのイヌイットの人々に会い、イエンデ湖付
近からノルウェー最高峰のガルホピッケン山を眺
め、ケルト人の色濃くウィスキーの源流であるス
コットランド、仕事を利用して南アフリカ共和国
のサファリの中などなど、自分で振り返っても少
し異常です。さらに、20年くらい前から、渓流(源
流)釣りにのめり込み、北海道から熊本まで、全
国の主要な河川に竿を出しました。
 そのような人間なら、迷うことなく山登り、渓
流釣り、卓球、海外旅行などを自由に楽しめばと
のことでしょうが、第二の人生の終末に「死」が
控えております。死の間際まで自分が本当にした
いことは何なのか?かつて手を染めた囲碁、未経
験のピアノへの挑戦などまでもが頭に浮かび、勝
手に悩んでいる次第です。