職 人

        久 保 浩 通

「職人」「匠」と言えば、何か特別な人間のように聞こえる。
 日本の高度成長期の土台を支えてこられたのは、これら職人の力が必要不可欠であった事は間違いない。
 素晴らしい技術の継承と熟練された経験、頑固なまでの忍耐強さで“MADE IN JAPAN”を創生し
た。それを同じ日本人である営業マンが熱意を持って世に送り出し、様々な業種がコラボ(協力)し
て未知の可能性を含んだ製品・商品を開発販売してきたのである。
 今、産業・農業含め、この土台となる「職人」「匠」の後継者・伝達者が業種を問わず、減少傾
向にあるのは周知の事実である。
 この原因の一つとして、所得の問題が挙げられている。「他人の釜はうまく見える」というが、
人間は他人と比べて自分の生活を判断したりする生き物の習性からくるものからか…
 楽をして儲けたいという考え方が、常識として今を生きる我々の頭を支配しているのも間違いな
い。これは、仕方のないことなのかもしれないと思ったりすることもある。
 というのも、現代のスピード社会において一人前になるまで何十年〜と悠長な事はいってられな
いからである。実際に就職状況も仕事が無いような事をマスコミは報道しているが 一極集中というか、仕事を選んでいるから自分
の思うような(楽をしたい)会社に入れないという現実がある。
 忍耐強さを求められる業種、つまり職人・匠は避けられてしまう傾向があるのだ。仕方なく務め
ても目標がなければ、給料が安い、休みが少ないというだけで簡単に転職を探している。
 嘆いてばかりだが、私も職人の一人として伝統文化の承継を頭に置き、後世に伝えていかなけれ
ばならない年代に入ってきた。そうする為にも、製品を作るだけではなく職人が苦手としてきた営
業力を磨いていかなくてはならない。
 良いものを生産し、どういった形で世間に広めていくか? 止まってはいられない!