National Health Service

           神 徳 眞 也

 ロンドンオリンピックの開会式では、英国が
誇る歴史や文化が華やかに紹介されていまし
た。 その中で、青い光のなか300台を超す病院
ベットが並べられ、患者と看護師6 0 0名が踊
り、「NHS」という文字が浮かびあがるという
場面を覚えておられるでしょうか?
 「NHS」とはNational Health Service。
「国民保健サービス」の略称です。1948年に創
設された、誰でも無料で(旅行者であっても)医
療が受けられるイギリス自慢の国民皆保険サー
ビス制度です。税金で運営されるNHSは、長らく
予算不足の危機にさらされ、がんの手術を受け
るのに何カ月も待つ事態となったこともありま
したが、1990年代後半、労働党のブレア政権か
ら予算措置がなされ、保守党のキャメロン政権
下でも、NHSは予算が増える数少ない分野となっ
ています。「誰でも平等に医療が受けられるこ
とは、英国社会の核となる価値」と認められて
いるからこそのオリンピック開会式でのアピー
ルでしょう。
 日本の医療にも、1961年に創設され50年の歴
史を持つ、誇るべき国民皆保険制度がありま
す。 保険証があれば、「いつでも」「どこでも」「誰に
でも」医療サービスを受けることができる素晴ら
しい社会保障制度です。しかし、今の日本には
様々な理由により保険証を持たない人、持てな
い人が増えています。100万人とも言われていま
す。国民皆保険制度が空洞化、形骸化している
と言える数字です。保険料が払えない、金の切
れ目が命の切れ目になってきています。しか
し、国民皆保険制度は、私たちの生活をより安
心感のある継続性のあるものにするために必要
不可欠であり、世代に引き継ぐべき有益な社会
保障制度であることに間違いはありません。
 ただ、医療サービスの維持には、大変なお金
がかかります。現在、年間35兆円の医療給付費
社会保険料だけでは購えず、国庫から約10兆
円が入っております。この10兆円のために借金
を重ね続ける日本は、破産してしまうといわれ
ています。しかし、本当に大変な額なのでしょ
うか?全世界の総保険額が100兆円といわれてる
民間医療保険に、日本国民が毎年支払っている
保険料は、いくらだかご存知ですか?約半分の50
兆円です。皆保険制度のないアメリカでさえ30
兆円です。昼夜を問わずテレビコマーシャルに
より繰り返し、健康不安をあおられた結果で
す。私たちの国には、国民皆保険制度があるの
ですから、本当は民間医療保険は必要ないもの
なのです。そのことをもっと人々に知っていた
だき、私たちの国民皆保険制度を守っていきた
いものです。