情報の活用

           村 重 浩 三
 
現代人は、どうしてこんなに「情報」が好き
なのか、とても不思議に思います。
 パソコンや携帯電話でインターネットに夢中
になり、テレビの情報番組にチャンネルを合わ
せ、新聞や雑誌をくまなくチェックする……果
たしてその中にどれだけ、本当に必要な情報が
あるのでしょうか。
 いや、要・不要を主体的にピックアップして
いるのかどうかさえ、そもそも疑問です。
 ただ漠然と受動的に、情報のシャワーを浴
び、情報の洪水に押し流されているだけのよう
に私には見えます。
 情報という目に見えるもの、形のあるものを
集めて安心したいのかもしれません。しかし、
ネットやテレビや印刷物を通じて頭に詰め込ん
だ、誰もが知っている情報など、どれだけ集め
ても、それはただ、「みんなと同じ」になった
に過ぎない。みんなが知っていることを知り、
みんなと同じようにまた少し頭でっかちになっ
て、それで安心していても意味はないはずで
す。
 2009年のシーズン終了と同時に、野村克也
プロ野球の監督生活に終止符を打ちました。
 データを重視するID野球を標榜し、「野村ノ
ート」というリポートで選手に野球の定石を叩
き込んだ野村氏は、ヤクルトや楽天など弱小チ
ームでの采配に手腕を発揮しました。
 野村氏自身は、定石やデータを知っていなが
ら、それを超える感性も備えていたに違いあり
ません。
 選手時代、捕手という重責をこなしながら三
冠王を取ったほどの実績は、だからこそのもの
でしょう。しかし、感性は言葉ではなかなか伝
えられません。そこで、最低限、教えられるも
のとして、定石やデータを選んだのではないか
……それが私の推測です。