富士山の環境について

          入 江 弘 幸

 一昨年、世界文化遺産への登録が決定した富
士山だが、2003 年に世界自然遺産の暫定リスト
入りを政府が見送った理由は、「ゴミ」の問題だ
った。これを解決せずに、世界遺産の仲間入り
を果たしたことに少し疑問を感じた。確かに富
士山に文化的価値の存在は認めるが、本当に両
手をあげて喜べる状況なのだろうか。
 調べてみると、環境省が国立公園などの現場
管理作業のために雇用した地域住民によって構
成される「グリーンワーカー」による平成23 年
度実績として、山岳部の登山道で0.75トン(山
梨県側:0.7トン+静岡県側:0.05トン)、富士
山北麓で6.3トンの「ゴミ」が回収されている。
 登山者が増加傾向にある中、登山道でのごみ
は少なく感じられるが、麓では非常に多くのゴ
ミが捨てられていることが分かる。また、別の
データによると、「富士山をきれいにする会」が
行う「富士山環境美化クリーン作戦」において
2012 年に134 トンのゴミを回収しており、これ
は約30 年前(1982年)に回収したごみの量と全
く同じ量であるとされる。参加する団体や人数
によって毎年回収できる量は変動するのかもし
れないが、“拾っても拾いきれない”現状がそこ
にあるということが伝わってくる。
 ゴミの不法投棄はその周辺で生活する人々に
とって迷惑極まりない行為であるし、何より循
環型の社会構築に悪影響を及ぼすことは言うま
でもない。特に、富士山は日本を象徴する山で
もあり、世界遺産に登録されたことで登山客の
より一層の増加は目に見えている。
 私は、そういった「ゴミ」に対する意識づけ
をするためにも、義務教育課程の中で「山」に
触れる機会を作るべきだと考える。社会見学で
クリーンセンターに行くように、山に登って、
その楽しさや怖さを知り、そしてゴミを拾って、
なぜゴミを捨ててはいけないかを学ぶ。また、
理科で学ぶ環境分野をもっと詳しく掘り下げて
考える「環境」という授業を新設するのもよい
かもしれない。即効性はないかもしれないが、
さまざまな環境問題が飛び交う現代において、
その意識づけは必要なものであると言えるだろう。
 せっかく世界遺産に登録されても、「Mt. Fuji
は最悪だったよ」と言われれば意味がない。一
刻も早く国が先頭に立って清掃活動等を支援し
たりすることももちろん大切だが、一番手っ取
り早いのは我々がゴミを捨てないことである。
ポイ捨てはいずれ自分の身に帰ってくることを
自覚しなければならない。