銀行の貸出金利はどうやって決まるの?

    
          笠 原 直 樹
 
銀行の貸出金利の一般的な考え方を、企業向
け貸出を例にして簡単にご説明したいと思います。
 銀行の貸出金利は大きく分けて4つの要因が積
み重なっています。

?調達コスト
 これは銀行が貸し出す資金を調達する金利
ことで、最も大きな調達源はお客さまからの預
金で、日本銀行や市場から調達することもでき
ます。
 一般企業で言えば、仕入れにあたります。

?経費コスト
 これはいわゆる経費率のことで、人件費・店
舗などの物件費・システム費などが銀行の代表
的なコストです。

?信用コスト
 貸出先企業の倒産確率を想定し、それをコス
トと考えます。
 例えば、向こう1年間の倒産確率が0.5%の企
業1,000社に100万円ずつ(計10億円)ご融資をした
として、想定通りに1年後に1,000社の内5社(0.5%)
が倒産したとすると、500万円が貸倒れ損失にな
ります。
 ですから、その1,000社から100万円×0.5%=
5,000円ずついただいておけば貸倒れの500万円
を賄える計算です。

?収益
 銀行も営利企業ですから、上記?〜?のコス
トにいくらか儲けを上乗せしたいと考えます。
具体的な例で考えてみますと、?調達コスト
が0.2%で、?経費率が0.7%の銀行が、?倒産確
率0.6%の企業にご融資して、?0.3%の収益を上
げようと考えた場合、?0.2%+?0.7%+?0.6%
+?0.3%=1.8%が貸出金利の理論値になります。

しかし、物の値段と同じように、貸出金利
需要の強さや企業間競争で決まります。
 景気が悪く企業の借入ニーズが低い時には理
論値を下回る金利提示も必要になりますし、銀
行同士の競争が激しければ、?の収益部分が確
保できないばかりか、?〜?のコスト部分も割
り込んだ赤字金利をご提示することもあり得ます。
 業界用語ではこれを「腹切りレート」と言っ
たりもします。
 
以上は本当に大雑把な説明で、実際にはさら
に複雑な要因が絡まっていると思ってください。

おっと、今日も「切腹もの」の融資案件が……。
以上