42年振りの新入社員……

            白 石 民 彦

 高校を卒業して東京へ、そして大阪本社(当時)
の企業に就職して37年。全国を転々としてやっ
と昨年、防府が最終赴任地となりました。盆、
暮は両親の顔を見に帰省はしていたものの、や
はり42年間のブランクのある防府に戻って家業
を継ぐことにはそれなりの勇気と覚悟が求めら
れました。
 新入社員ならともかく60才を超えた人間が新
たな仕事の為に帰ることで周りに違和感を与え
ないだろうか? 経糸と横糸でしっかりと織り上
げられている防府という着物地に小生は果たし
て上手く織り込められるだろうかと……。しかし、
不安は杞憂に。両親のお蔭もあり大変温かく迎
えて頂きました。ありがたく思っております。
 帰郷して色々な会からお声掛けを頂きました。
多くの人にお会いさせていただきました。しかし、
自分のスタンスを決めかねていた時、ある先輩
から「自分はあと10年、愛する防府の為に尽く
したい。地元に尽くすことが子供達に残せる最
大の財産になる」との話をお聞きしました。防
府RCに入会する直前でした。家業を通じて地元
を愛す心と尽くす行動。それが子孫繁栄に繋がる。
何となく気持ちが晴れました。
 サラリーマン時代は16回の転勤を経験しました。
同じ職場は一度もなく常に新しい人々と知らな
い仕事との出会いでした。新しい職場ではまず
聞くことから始まります。素直な気持ちになっ
て現状を受け入れてみることが第1歩です。
 この3月でほぼ1年が経過しました。18才まで
勤務した防府という職場に2度目の職場復帰をし
たような気持ちになっていました。しかし、実
態は違っていました。18才と60才では視点が違
うのも当たり前です。ほとんど防府がわかって
いない自分がそこにいました。
 防府には幸いにして天満宮を中心とした歴史
と文化があります。そして絆があります。地域
に根ざした慣習やしきたりも数多く残っています。
まずもって思い切り防府を感じたい。素直な心
であたかも防府に就職した新入社員の気持ちで
……。「そこから何かが始まると信じたい」と
思っています。