「人生生涯小僧のこころ」で

      
            三 田 浩 士
            (東山口信用金庫)
 
 10年程度前になりますが、ある雑誌で大峰千
日回峰行という苦行を達成した塩沼亮潤住職の
事を知りました。
 この行は、奈良県大峯山の頂上にある大峯
山上本堂までの往復48キロの山道を1,000日間、
1日も休まず歩き続けるという難行です。
 それだけでなく、ひとつだけ掟がありまして、
それは、いったん行に入ると足の骨を折っても、
不慮の事故に遭っても決してやめる事ができず、
万が一この行を途中で止める時は、常備してい
る短刀で自害するか、紐を木に結び付けて首を
くくって命を絶たなくてはならないという想像
を絶するものです。
 その方の本に「人生生涯小僧のこころ」があ
ります。私は雑誌でその本を知っておりましたが、
読んだ事はありませんでした。
ある時(8年位前でしょうか)、部下指導をして
おりました時、少々感情的になった私は「あなたは
精神面が甘い。“小僧のこころ”でも読んで自分を
見つめ直しなさい」と叱咤激励した事がありました。
 さて先日、その部下が居ります店舗に出向い
たところ、「三田さん、“小僧のこころ”で頑
張っています。部下にも本を薦めています」と
満面の笑顔で話しかけられました。
 正直に“その本を読んでない”事を伝えた私に、
しばらくして(人生生涯小僧のこころ)をわざわざ
届けてくれました。有難いことです。私は思
いました、「あ〜、この本を読む運命だったん
だなー」と。
 本の全てを理解する徳は持ち合わせておりま
せんが、ひとの心の不安定さを改めて学びました。
 1,300年で二人しか成し遂げていない苦行を達
成した方でさえ、“ひとりだけ受け入れることの
できない苦手な人がいた”という事でした。そ
れ程ひとの心は「わがまま」という事です。
「自分を見つめ直せ」と縁あって“教え”が戻
って参りました。感謝 !!