立ち止る勇気

       
 久 保 浩 通
 
先日の大村会長の話しの中から私は、「少し
考えれば分かることを、今の利益で先送りする
現実」が見えたように感じた。テーマは「割り箸」
だ。
 普段私たちが何気なく使っている割り箸は、
現在90%以上が中国で生産されており、年間約
300億膳も利用されている。最近中国では森林伐
採による自然環境の悪化により、割り箸の輸入
価格が高騰し、将来的には輸入ができなくなる
のではと危惧されている。これからは「My箸で!」
という内容だった。
 私たちは、店頭では割り箸はタダで受け取る
ことが出来る。その感覚に慣れてしまい、割り
箸とはタダの商品で使い捨てるのが当然である
という構図が出来上がっている。
 使い捨てで、見せかけ上、タダが当たり前の
消費者。取り扱いが便利で安価という販売店
どちらも価格が大きな魅力となっている。しか
し安いという基準で、本当に正しいのかと、割
り箸は問題提起していると感じる。
 元々柱などに使い余った端材の有効利用とし
て作られた割り箸。しかし現在では資源浪費型
社会の中で、1円でも安く大量に手に入る海外の
木材が大量に切られ輸入されている。一方柱な
どの木材需要を海外に奪われた日本の産地は生
産力が弱まり、箸も高価格で業者から相手にさ
れなくなり、衰退する一方である。
 ただ、こうした問題は以前から色々と取り上
げられてきた。目先の事や自己利益の為に奔走し、
本質や全体の目線が軽視されている。
 正しいことや解決策を知っていながらも、自
分の身を考えると出来ない。これはもう人間の
性かもしれない。人はそれほど賢い動物ではな
いから、かなりの人物でない限り自分の事ぐら
いしか見えてこないし、よほどのことのない限り、
集団で取り組もうとはしない。
 人が自身の身を滅ぼすのは、「己の利益優先で、
物事の本質を見ない姿勢」ではないかと、私は
割り箸を通じて感じた。