ミステリアスチミケップ

喜多村 誠
 
チミケップ湖畔のホテルに泊まった。僅か8
室の小さなホテルである。勿論ケイタイは圏外
だが部屋にはテレビも電話もない、鬱蒼とした木々
に囲まれた静かな湖があるだけだ。それでも日
本語の話せるスタッフもいるので不自由は感じ
ない。 
 長女も結婚し次女も東京暮らし、女房と二人
の何とも云えぬ緊張感を緩和すべくはるばるこ
こまでやってきた。
 湖畔のほとりの庭のデッキチェアで飲むシャ
ンパンもさえずる小鳥の鳴き声も慌ただしい日
常を忘れさせてくれる。
 チミケップ湖に目を移すとカヌーやカヤック
を楽しんでいる人もいる、冬には一面に張った
氷上でワカサギ釣を楽しむと云う、いいところ
だなぁ、ここは。
 モノの豊かさからココロの豊かさへ、忘れて
いたものを取り戻す、やっぱり旅行はいいものだ。
 夕食は地元の取れ立て素材を使ったフレンチ
フルコース、美味しいワイン。幸せだなぁ、美
味しいなぁ。
 さてここは北欧スウェーデン、首都ストック
ホルムから車で50分、という訳じゃない。
 エアーポートメマンベツ、つまり北海道道
地区の女満別空港から小一時間のところである。
 実を言うと、“男の隠れ家”という本に紹介
されていたのだ。隠れ家に女房連れていって何だ!
という声もあるかもしれないが、しょうがない
だろこの際……。
 東京出張の折、女房と合流し東京〜女満別
翌日は釧路へレンタカー、釧路〜千歳はJR、
千歳〜東京〜宇部、乗り物の旅でもあったけど、
もう一度行くぞと決めた旅だった。
 センスのある旅だった。オシャレな旅だった。
テーマ・企画共に優れた旅だった。亭主の威厳
回復の旅だった。少なくとも私はそう思っている。