天の恵み 地の恵み 人の恩

           泉  雅 央
 
 昨秋10月25日に「リバーサイド柳」付属農
園にて芋掘りと収穫祭を行いました。当日は西
京銀行の若手5人と職員の家族を含む38人参加
で、賑やかに秋の一日を過ごしました。
 思えば昨年3月に竹林伐採ボランティアの団
体から筍堀に招待され、その楽しさに勢い「秋
に芋掘りをしよう!ただ掘るだけでなく植えよう!」
と無責任な思いつきから始まった農業体験でした。
 いざ芋の苗を植えるにしても畑もなく、苗も
ありません。その事実に気づくのに2ヶ月かか
りました。

【天の恵み】
 農業は神秘的で魅力的です。あの硬い種が土
に植えられ水をかけられることで、芽が出て、
葉が茂り、実をつける。一見無機質に見える種
の中に生命が眠っています。まちがいなく生き
物です。周りに雑草が生えると生育が遅くなり
草取りをすると元気になります。手をかけてや
ればやるほど応えてくれます。古代の農業をは
じめた人間は何を考えて種を植えたのだろう…。
ロマンです。

【地の恵み】
 農業は楽しく苦しいです。世話をすればする
ほど応えてくれますが、手を抜くとたちまちし
っぺ返しをします。特に夏野菜は草との戦いです。
夏の暑い中、汗を流して草を取ってはじめて秋
の収穫が得られます。スーパーでお金さえ出せ
ば手に入ると思っていた当社の職員にはいい勉
強になりました。苦しい草取りをして初めてお
いしくて安心安全な野菜が食べられる。当店全
員この夏はナスビをスーパーでは買いませんで
した。12キロのトウガンが収穫でき、13人で分
けて持ち帰り食べました。スイカは昼食後のデ
ザートとして全員で食べました。この楽しく美
味しいことは暑い苦しいことのご褒美であり野
菜からのお礼だと感じました。

【人の恩】
 堆肥の入った上質の畑を快く提供していただ
き夏の水やりまで手伝っていただいた柳会長、
急に芋の苗弦を200本欲しいと言われても準備
していただいた羽嶋さん、素人農園の作り方を
丁寧にアドバイスいただいたJAのみなさん等々、
多くの人のお助けをいただき素人集団の農場経
営は続いています。調子に乗って冬野菜は20種
類以上を植えました。天に感謝!地に感謝!そ
して人に感謝!
 

 サツマイモは17世紀はじめに琉球(沖縄)に
伝わりました。生命力が強く痩せた土地でも育ち、
栽培も簡単です。何度も琉球の人々を飢饉から
救いました。その後、
三浦按針により長崎に、
薩摩の前田利右衛門により薩摩に伝わり「カラ
イモ」と呼ばれました。享保の大飢饉では長崎
と薩摩では餓死者は出なかったと伝えられてい
ます。そして近代では戦中戦後の日本人の食を
支えたのはサツマイモでした。甲子園球場が一
面芋畑だったことは広く知られています。
 そんなサツマイモも甘いことから主食とはな
れなかった、という不遇な面もあります。しか
し何の愛想もないジャカイモに比べてコロッと
愛嬌のある形は、ほほえましいですね。僕も神
戸の自宅のベランダでプランター農園をはじめ
ました。美味しい野菜を食べるための苦労を教
えるためです。
 貴重な体験をありがとうございました。そし
てまだまだ作り続けます。もはや夏野菜に何を
植えるか…とも考えています。