離れて分かる物のよさ (その2)

       アパホテル<山口防府>
          今  井   進

 ホテルに勤務する私が言うのもおかしいが婚
礼にしても昔は、お嫁さんの実家から馬に乗り、
ご近所の方に見送りされ、お婿さんの実家にて
式を行う。地味ではあるが心に残る素晴らしい
ことである。幼い頃の家の手伝い。食卓の1膳の
飯を食べるにしても現代のように出された食事を
ただ食べるだけでなく、風呂もしかり、水は、井
戸から木桶にてくみ上げ天秤棒にて何回も井戸と
家を往復取得し、飯、風呂に使用。かまどの火を
おこし、風呂は、釜の火を起こした。手伝いが親
と子どもたちの心をつなぐ架け橋となった、そし
て家族の絆を確かめ合い、固くする手段になった
と思う。私は子供達に、昔はすべてよかった、と
言うつもりはない。今の暮らしのなかにほとんど
なくなってしまった大切なもの、あるいは、いま
の暮らしのなかで弱くなっている大切なものを大
事にしてほしいと思う。
 普通、ふるさとというのは、言うまでもなく自
分の生まれた地域のことと応える方が99%である。
私は、親と一緒に過ごした地域、叉如何に心に響
いた時を過ごせた地域かの2点である。ふるさと
に限らず物の良さと言うのは、距離を置いて感じ
る事が多い。ふるさと、親、妻子と離れた時、特
に強く実感した。私の場合、ふるさとを初めて離
れたのは、53歳の時でした。それから7年、7ヶ
所の転勤と息つく暇も無い7年であった。何度か
強烈なホームシックにかかりました。いつも一緒
にいた妻子たちがいない、父母もいない、毎晩、
どうしているかと心配でした。電話は当初、良く
元気な振りをしてかけたものであった。最近は、
その元気な振りをするのが辛く電話も必要時のみ
と成って来た。
 防府に赴任し、ずいぶん遠くへ来ちゃったな、
と思ったものです。育った故郷にかかわる何かを
見聞きするだけで心が騒ぎ、涙してくる、それが
ふるさとです。7年間の単身赴任でふるさとを見
る眼が変わり、ここ何十年も見えていなかったふ
るさとの大事な所、面白い所、良い所、魅力、叉
駄目な所も見えて来ました。帰郷の、あの山が削
られ、川の流れが変わり、あの道、あの木、あの
家、あの香り、あの音が無い故郷には帰りたくな
い。思いっきり故郷を抱きしめたい気持ちで一杯
です。

離れて分かる物のよさ

失くして分かる物の大事さ。

 幸せと不幸、両方経験しなければ幸せを感じ
る事が出来ないと思うが、ある事を、ある人に言
わせれば不幸と言い、叉ある人に言わせれば幸せ
と言う。その物に如何な気持、状態で接するかで、
その物の価値、良さが変化すると思う。
 より魅力的な故郷にするには、古来からのその
町の風情を如何に壊さず、生かして再生、叉駅、
駅前のやさしい開発(近代的な様相は、東京に任
して)がポイントと思う。そして町の響き、風、波、
雨、四季の音(音楽が良い)防府に来る人たちの
心に幸せを感じさせる事が出来れば、より一層効
果がアップする。幸せでない人は、幸せな事でも
不幸と感じるから。
 とりとめもない文に成り。あしからず・・・・。