DJ AZUMA始末記

          東  佳 範
 
「こんばんは、DJ AZUMAです。夜のひと時を、
クラシックを中心として、取って置きの音楽をお届
けします」と言う口上でFMわっしょいのミュージッ
ク・キャビンは始まる。
 私がパーソナリティを務めている番組であるが早
いもので年末には、まる5年になる。
 きっかけはFMの社長でもある大村さんと歓談して
いた時、職員の乾さんが通りかかり私を紹介して頂
いたのがきっかけである。
 番組のコンセプトは小部屋(キャビン)に一人住む
初老の男に若い娘が訪ねてきて音楽の話をするとい
う事にした。そしてリスナーは音楽を聞き流しにす
るも良し、本気で話を聞かれても満足できるものに
した。
 その方針は今でも変わっていない。ただコミュニ
ティFMには珍しいクラシックの番組であるので、な
るべく親しみ易く、かつ中身のある、そして私自身
が聞いていて楽しい番組にしたかったのである。
現実には4割はクラシック以外の曲、歌謡曲、ポッ
プス、ジャズ、タンゴさらには琴、三味線の純邦楽
をお送りしている。
 クラシックは硬いと思っている方は多いと思う。
オペラは基本的に色恋ものであるので偏見を持つ必
要はない。以前放送したものを紹介しよう。「Rシ
ュトラウスのサロメの7つのベールの踊り」「バル
トーク中国の不思議な役人」「フランクのピアノ
5重奏曲」「ワーグナートリスタンとイゾルデ
愛の死」のプログラムである。キーワードはエロ!具
体的にはストリップ、未成年の売春と殺人、不倫、
SEXの描写?である。なんとクラシックとは興味深い
ものであろうか。
 現実にはRシュトラウスの「サロメの7つのベール
の踊り」は最近の演出では最後は全裸になると言わ
れている。少女のような愛らしい風貌を持ち、すぐ
れたソプラノ歌手でバレエを踊れて、それなりの体
形でこの役を演ずる歌手を探すのは至難の業であろ
う。
 また数年前の山口情報芸術センターの公演は凄か
った。ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」で
あったが白人女性1人と数名の男性のコンテンポラ
リー・ダンスで第2幕の途中から女性が全裸となっ
て、飛び回った。ストーリー上それも有りとは思っ
ていたのだけど、山口の田舎でこんな良いものが見
られるとは思ってなかった。娘を連れて行ったのだ
けど、固まってしまった。
 娘の話が出たが番組の初代のアシスタントであっ
た。いきなり番組を持ってDJという事で心細かった
ので当時高校三年生で受験が終わっていた長女にキ
ャビンを訪ねる娘になってもらった。スムーズに番
組が立ち上がり感謝している。以来1年おきにアシ
スタントが代わり今は4代目のサリー嬢が務めてい
る。彼女はピアニストで2年前彼女が企画するコン
サートを偶然に聞きに行き番組への出演を依頼し
た。数か月後にはアシスタントになって頂いた。我
ながら手回しが良かったと思う。彼女に言わせると
ナンパされたと言っている。光栄な話である。
 縁とは不思議なものである。あの時乾さんが来な
ければこの話はなかったと思うし、サリー嬢も私と
出会ってなければ今の音楽活動は無かったと言って
いる。番組を頂いた大村社長さんに感謝。幸せま
す。