「涙メシ」(なみだめし)

          澤 田 健 規
 全日空の機内上映番組に「嗚呼!!涙メシ」と
いう番組があります。この番組では、「涙メ
シ」とは、
?涙するほど美味だった食
?人生における大切な思い出と結びついた食体
 験と、定義している。
 11月は、カリスマモデル・マエノリこと前田
典子さん。彼女の思い出とともに、涙メシベス
ト3を発表するストーリーです。
 まず第3位が、大阪からモデルを目指して上京
したときに友人に紹介してもらった「ミルクレ
ープ」、そして、夢を追いかけてパリへ渡った
「ガレット」が2位。少女から女性へ、日本から
世界へと様々な舞台で彼女を支えてきた、いか
にもモデルという涙メシである。
 ここで、私自身の涙メシとは何だろうと思い
出してみた。
 小学校のとき、歩き疲れて友達と食べた「コ
ロッケ」。
 中学のとき、アメリカ人はこんなにおいしい
ものを食べているのかと思った、「ケンタッキ
ーフライドチキン」。
 そして、高校時代、部活でくたくたになっ
て、もたれかかった自販機で買った「ファンタ
オレンジ」の、爽快感。
 さて、番組は前田典子さんの涙メシ第1位へと
移る。「ミルクレープ」「ガレット」と続いて、彼
女の選んだのは何と「きつねうどん」でした。
 彼女の大阪の実家は、うどん屋さんを営んで
いたそうです。小さいとき、かぜを引いたとき
や、元気がなかったときいつもお母さんが、ど
んぶりからはみ出してしまうほど大きなお揚げ
ののった、きつねうどんを食べさせてくれたそ
うです。不思議なことに、そのきつねうどんを
食べると、元気になれたそうです。番組は、10
年前店を閉めた大阪のお母さんが、当時の味を
再現したものを宅急便で届けてくれたものを彼
女が湯がいて食べ始め、母からの手紙が読まれ
ました。
 そのとき私の頬を一滴の温かい涙が、零れ落
ちました。実は、私の「涙メシ」も「うどん」
なのです。
 郷里、桐生市はうどんのまちです。もちろん
街中にうどん屋さんは多いのですが、ほとんど
が各家庭で作る自家製手打ちうどんです。祖母
が打ち、母が打ち、実は父も打ちます。子供の
ころ台所から「健ちゃん踏んで」と声がかかり
ます。私は喜んでこねて丸まったうどんのかた
まりをかかとで、満遍なく踏みつけます。うど
んをこねるのに私の体重がちょうどいい塩梅だ
そうでした。今も帰省の度に「うどん」が迎え
てくれます。
 うどんは、私にとって「ユンケル」や「ウコ
ンの力」よりも元気の源です。
 皆さんにとっての「涙メシ」は、何ですか?
今度、聞かせてください。