愛宕山千日詣り

            東  佳 範

 この時期はいつも京都の同業者から山登りの
お誘いがある。「愛宕山に舞妓さんと登りまひ
ょ」である。
 愛宕山について説明しよう。京都西北部高雄
に位置する標高924mの山である。登り口の清滝
が約200m、目的地の愛宕神社が約900mで標高差
700mである。
 京都では比叡山と並び古くからの信仰の対象
で参拝者は多く、歴史に登場するのは明智光秀
が本能寺に討ち入る際に参拝し連歌の会を開い
たり、お御籤を引いた話はご存知と思う。亀岡
市からの登山道は明智越えと言われている。
 千日参りは7月31日から1日にかけての参拝で
千日分の火災予防の御利益があると言われてい
る。また3歳未満の幼児がお参りすると一生火難
に遭わないと言われており、事実子どもを背負
っての参拝者は多い。ただ傍目に見て親子共々
大変な難行である。背負われて泣いている子
や、しゃがみ込んで動かない子もかなりいた。
もっとも元気に登山をしている子もいる。まさ
に京都人ならではの信仰みたいなもの、防府
なら子どもを連れて裸坊に出るようなものと思
う。
 当日は15時にお茶屋に集合、ジャージ姿の舞
妓さんに麦茶の接待を頂き、総勢29名そろって
マイクロバス3台に分乗して登山口へ。記念撮影
の後いざ愛宕神社へ。私は一昨年に続き2回目の
登山である。運動不足の割には快調に?足が進
む。恐らく前回に比べて精神的な余裕であろ
う。
 舞妓さんと言ってもバカにしてはいけない。
十代で心身ともに鍛えられた娘たちは、すごい
勢いで登って行く。参拝者はかなり多く天満宮
の誕辰祭の初日よりはかなり多い。登山道は急
なとこで天満宮の階段くらいであるが、かなり
荒れている。私はハアハア言いながら、5人のグ
ループで休み休み登った。
 愛宕山ではお約束事が有り、下山する参拝者
には「おくだりやす」登山する参拝者には「お
のぼりやす」と声を掛ける。登山の際はきつい
ので声も小さくなる。
 2時間半かけて愛宕神社へ、先頭のグループは
1時間で登頂していた。参拝、記念撮影後持って
きたおにぎりを頂き、愛宕神社の火迺要慎(ひの
ようじん)のお札を購入して休息後下山へ。
 良くある話であるが登頂ですべてが終わった
気になるが、下山で地獄を見る事になる。膝は
がくがく、足は痛い。足元の階段は荒れてお
り、一昨年の下山の際、九州の同業者が転倒し
手を捻挫した。今回は自分のステッキを持参し
たので良かった。1時間半で降りて、茶店の缶ビ
ールで一息つく。
 全員下山後22時頃お茶屋に戻り打上げをす
る。一緒に行った10名の素顔の舞妓、芸妓さん
との懇親会は楽しいものであった。