四国石槌山

          近 藤 宏 一
 
 昨(2012)年6月、四国石鎚山10回登山の悲願を
成就した。支えてくれた登山仲間、特に中村明
人君には心からお礼を申したい。
 私が初めてこの山に登ったのは1982年、今か
ら約30年前になる。山の標高が1,982mなので、
数字的なゴロ合せも当時は意識にあった。
 しかし一番魅力を感じたのは、西日本最高峰
で、晴天の日には頂上から太平洋も日本海も見
える…と「山と渓谷社」の解説本に書いてあっ
たこと。
 4回目までは、柳井港からフェリーで松山市
由で面河渓へ、ここから石鎚スカイラインを抜
ける。スカイラインは素晴らしい眺望で当時は
通行料が要った。家族や友人同行で面河渓谷に
泊まり、翌日登ったこともある。
 登山基地の土小屋からは2時間程度で頂上に着
くが、30年前の頂上は一間四方の敷石に石祠が
あるだけの簡素な霊峰であったが、その後の登
山ブームで頂上付近は様相を刻々と変え、今で
は社殿はもとより売店・宿泊設備も整備され、
すごく立派になった。
 ただ、山頂の天気は不安定で行く度に雨天や
ガスがかかり太平洋はおろか日本海見晴らしの
夢は遂に叶わなかった。
 そんな折「俺たちゃー行く度に晴れよ…」と
言うのが中村明人君グループである…ヨッシャ
乗った…と以後はこのグループと登ることにな
ったが、彼らの登山路は土小屋コースではなく
正面コースである。
 しまなみ海道西条市経由〜ロープウェー〜
成就社へ(白石旅館一泊)翌日登下山となる。 
この登山コースは最初の部分が降りで、そこか
ら本格的な登りとなる。降りは逆に最後の処が
登りとなり疲れた体にはきつい。ただ、これこ
そが石鎚山岳信仰の本コースであり、鎖場が四
カ所あり、二の鎖場手前で土小屋からのコース
と合流し頂上に達する。登山コースには最近、
土砂崩落予防の階段が付けられ、この階段を登
るのが山道を歩くよりもきつい。膝にくる。し
かし、春のあけぼのつつじ、秋は紅葉に彩られ
た風景が瞬時心をなごませてくれる。
 2010年に8回目登山の際、宿の主人に…あと2
回、10回登山まで頑張りなさい…と励まされ、
2011年と2012年で10回登山を成し遂げた。加齢
と共に時間もかかる。登山仲間に支えられての
成果であり、仲間に感謝・感謝である。
 10回目登山は6月だったが、この時初めて西条
市にある石鎚神社本宮に立ち寄り参詣したのち
白石旅館に向かったが、山開きの7月1日まで御
神体はこの本宮におわしますとのことであった
が、この石鎚本宮の境内の幽玄さ、神社関連施
設の雄大さにも目を見張った。
 ロープウェイ駅の近くには山岳信仰の元祖・
役(エン)の行者の銅像などもあり、霊気あふれ
霊験あらたかな信仰の山、それが四国・石鎚山
である。