『識字』に対する無関心は間違い

          国際ロータリー第2710地区
      2012〜2013年度
     ガバナー  大之木 精二
 
会長、幹事、そして全てのロータリアンの皆
さん、今日は。
当ロータリー年度も今月を含めあと4ヶ月、即
ち3分の1年を残す時点に到達しましたが、私個
人は未だに折り返し点を回った位の心境で、や
り残した案件の消化に気の焦りは募る許りで
す。何卒更なるご支援ご協力を賜りますよう重
ねてお願い申し上げます。
 今月は「識字率向上月間」となっています
が、正直なところ皆さん、ピンとこないのでは
ないでしょうか。私もかつてはそうでした。日
本の現状にあって識字問題は卑近なものでなく
なっているだけに、どうしても関心が薄くなり
がちですが、実は「識字」を単に読み書きのレ
ベルで捉えていることが問題であって、その誤
解を改めると同時にもっと高い次元、もっと広
い視野に立たないと、この問題の核心が見えて
こないと私は考えています。
「奉仕を通じて平和を」のRIテーマのもと、私
達は日夜ロータリー活動に挺身していますが、
この識字問題は世界の平和実現において解決す
べき重要な基本的課題の一つなのであります。
 平和を妨げる2つの要因に「貧困」と「無知(
非識字)」があり、これらが密接な相関関係にあ
ることは容易に理解が出来ます。
 識字は社会経済並びに政治の実態を反映する
もので、世界には1日1ドル以下で生活している
貧困層が11億人、2ドル以下の貧困層が27億
人、即ち世界全人口の約半分が極度の低所得を
占めていると言われ、この人達は概ね非識字者
であります。
 又非識字者の3分の2は女性であり、母親が非
識字者だとその子供も又非識字者になる可能性
が非常に高くなるのも首肯できます。
 非識字者は職が得られない為、反社会的な行
動に走ることも多く、事程左様に貧困と非識字
が如何に密接に関係して社会的不安を増幅して
いるか、論を俟ちません。
 非識字者零と言われる我が国の人口は世界の
精々2%弱に過ぎないにも拘わらず、その生活実
態をみるにつけ、私は大きな矛盾を感じてなり
ません。
 地球上で満足に食べている者は3分の1、他の3
分の1は常に空腹を抱え、残りの3分の1は飢餓状
態にあると言われながら、私達日本人の食糧や
天然資源の浪費ぶりは、節約意識が向上したと
される昨今でも目に余るものがあります。
 一例を挙げるならば、東京都だけでも一日に
捨てられる残飯は米俵換算で1,300俵と言われ、
この現実を無視して世界平和を語るなどナンセ
ンスと言わねばなりません。
 世界の何処かの貧困は全体の繁栄と平和を阻
害する者だという認識に立って、世界中の人々
の生活水準を改善することが、ロータリーの平
和に対する基本的スタンスであることを改めて
想起すべきではないでしょうか。
 空腹の人に魚を与えるのではなく、魚を捕る
方法を教えることこそがロータリーでいう真の
奉仕の原点であることを忘れてはなりません。