祝 婚 歌

       加 藤  稔
 
今年(1月)、1人の詩人がなくなりました。 吉
野 弘(よしの・ひろし)さん、享年87。心温ま
る詩を数多く残されています。
 
ご存じの方も多いと思いますが、41年前にで
きた『祝婚歌(しゅくこんか)』。
 夫婦が仲むつまじくあるための心構えをつづ
った詩です。
 
先日結婚した息子夫婦に贈る言葉に致しまし
た。

二人が睦まじくいるためには
  愚かでいるほうがいい
  立派過ぎないほうがいい
  立派過ぎることは
  長持ちしないことだと
  気づいているほうがいい
  完璧をめざさないほうがいい
  完璧なんて不自然なことだと
  うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
  ふざけているほうがいい
  ずっこけているほうがいい
  互いに非難することがあっても
  非難できる資格が自分にあったかどうか
  あとで疑わしくなるほうがいい
  正しいことを言うときは
  少しひかえめにするほうがいい
  正しいことを言うときは
  相手を傷つけやすいものだと
  気づいているほうがいい
立派でありたいとか
  正しくありたいとかいう
  無理な緊張には色目を使わず
  ゆったりゆたかに
  光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
  生きていることのなつかしさに
  ふと胸が熱くなる
  そんな日があってもいい
  そしてなぜ 胸が熱くなるのか
  黙っていてもふたりには
  わかるのであってほしい
 
なかなかこんな風には日々は過ごせません
が、相手の気持ちを考え、こころに余裕を持て
るよう心がけていきたいものです。