「東流西流(山口新聞)」より

           白 石 民 彦

 昨年末、山口新聞の記者より突然訪問を受けた。
何かと思ったら同紙に掲載されている「東流西流」
という読者執筆のコラムを担当してほしいとの
依頼。聞いたら1月〜2月まで毎週1回の計8回の
執筆になるという。思わず「とんでもない」と
心の中で思った。
 しかし、記者は私の家業と経歴に興味を持っ
たとのこと。何を書いてもかまわないとの事前
了解を取り付けて、与えられたチャンスと思い
引き受けることにした。既読の方には恐縮です
が、1月12日に第2回目として掲載されたコラム
を再寄稿させていただきます。
タイトル:「蔵」からの贈り物
 昨年、当店は創業250年を迎えるに当たって、
その記念行事の一環として「店舗の新設」と「蔵
の改装」を行いました。
 蔵は明治23年に建造された呉服蔵です。126年
経過しています。昭和30年の出火で当時の店舗
は全焼しましたが、幸いなことに蔵は一部の柱
を焦がした程度でそのままの姿で現存しています。
 今回の全面改装に際して、中の保管物は廃棄
するか否かの判断が早急に求められました。長
年放置されており、何が出てくるのかわからな
い状態でした。出てきた物は箱一杯の毛筆文書、
雑誌や販促チラシ、反物、破布、道具、など大
正から昭和初期に当店で使用されていた物が殆
どでした。
 その中で特に私の目を引いたものは、数冊も
の衣裳図案集と1冊の付録冊子でした。
 衣裳図案は見事な色彩と斬新な意匠で一瞬に
して絵心のない私を釘付けにしました。
 その序文に曰く「日本和飾の問題はいかに外
国意匠を採用せんかに非ずして如何に古ぶりを
応用せんかにある」と……。いま一つの付録冊
子は昭和初期の「和服洋服の繰廻し更生全集」
という小冊子です。それを見ると当時の日本人
の服飾様式と物を大切にする精神とが如実に
じられます。当店ではこれらを「蔵からの贈り物」
として皆さんに開放したいと考えております。
ご興味ある方はお気軽にお立ち寄り下さい。 
                   以上