感動の手紙

        
  中 谷  泰
 
社会に出て、早20年が過ぎた。その20年間、
修業時代も入れて社業であるサービス業に従事
し、人生後半に突入した今思います。「自分へ
の目標」多分達成感は来ないような気もします
が、それは何処にも負けないホスピタリティー
を持った店になる事―全従業員がお客様の隅々
までの満足を満たす事が出来る店になる事。旅
行などに行くとそれを良く感じます。ホテルの
従業員の方の対応、レストランで食事をする時
など。しかしそのホスピタリティーはどのよう
に養われるのか未だ遠いところにあるような気
がします。
 このような事を考えるようになったきっかけ
がありました。それは東京ディズニーランド
(TDL) です。リピート率98%以上という数字がそ
顧客満足度を表しています。10万商圏での商
売では顧客リピート率をいかにして上げるかが
飲食店の鍵だと思っております。今思えば最初
に入社した会社の研修もTDLでした。TDLの素晴
らしさを語る一通の手紙があります。TDLに送ら
れたお礼の手紙です。紹介いたします。
《今月、数年ぶりに主人とTDL(東京ディズニー
ランド)に遊びにいかせていただきました。実
は、この一年前に亡くした私たちの娘の誕生日
そして命日でした。体がとっても弱かったため
に生まれて間もなくこの世を去ってしまい、主
人と二人、ずいぶん長い間、深い悲しみにおり
ました。助けてあげられなかった事、何一つ親
として、してあげれなかった事、いまも悔やん
でしかたありません。生まれてきたら、このTDL
に連れてきてあげたいという私たちの夢を果た
すこともできず、主人と話して、この日、娘の
供養のためにくることにしました。
 事前にガイドブックを見て、「かわいいお子
様ランチ」があることを知り、娘に食べさせて
あげたいと思い、ワールドバザールにあるイー
ストサイドカフェに入りました。お子様ランチ
は、本当は8才以下でないと注文することが出来
ないものでしたが、お店の方に事情を話すと快
く注文を聞いてくださいました。そして隣の4人
がけのテーブルに子供用の椅子まで用意してく
ださって「3人様こちらにどうぞ」と席を移して
くださったのです。「本日は、良く来てくださ
いました。ご家族で楽しんでいってください
ネ」と、まるで我が子がここに一緒にいるよう
に私たちを、もてなしてくださり、主人も感激
で私たちも感激で胸がいっぱいになり涙があふ
れました。
 娘を亡くしてからはじめて親子3人でいるとい
うことを、あじあわせて下さって本当に感謝し
ます。娘もさぞ喜んでいたと思います。思いも
よらぬ皆様の暖かいおもてなしのおかげで、と
ても良い思い出が出来ました。娘のためには、
とてもよい供養が出来たと思います。親子3人で
楽しいひとときをすごさして頂きまして本当に
ありがとうございました。娘は、天国へいって
しまいましたけれど私たちのかけがえのない大
切な宝です。これからも愛し続け一生ずっと一
緒に生きていこうと思いす。また、娘を連れて
遊びにいかせて頂きます》
東京ディズニーランドにて
 たぶん普通のキャストの方が対応されたのだ
と思いますが、思いやりのあるサービス、心の
こもったサービスとはこのような事を言うのだ
ろうと思います。間違いなく言える事は経営者
自身が最高のサービスマンであることだと思い
ます。この手紙は大村俊雄直前会長から当時防
府JC羽嶋秀一理事長に渡り、当時専務理事だっ
た私も拝見する事となったわけです。1999年の
事です。どんなにすぐれた機械が出来ても、パ
ソコン、携帯電話、便利な道具で過しやすい社
会になっても、「人の心」には到底かなうことは
ないのですね。